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建築の光と影

死ぬまでに一度訪れてデザインをじっくり見てみたいと思いながら
行けていないところはいくつもありますが、
その中でも最も行ってみたいところの一つに「ル・トロネ修道院」があります。

学生時代に「磯崎新+篠山紀信 建築行脚 中世の光と石 ル・トロネ修道院」という
写真集を見て、その写真に圧倒されたことを今でも覚えています。

質感豊かな粗い石を積み上げた、塊のような壁に穿たれた窓から
差し込む南仏の強烈な光が、暗く静謐な内部空間に注ぎ込むそのさまは、
まるで光で神の存在感を感じさせるかのような印象を受けました。

光と影のコントラストが宗教的な意味まで持っているかのような
重厚な印象を私の記憶に刻み込んだのです。
是非、生あるうちに見に行きたいものです。

翻って、日本の建築ではどうでしょう。

もちろん、日本の建築にも当然光と影はあります。
ものに光が当たると影はできるものなのです。

ただ、その印象はル・トロネ修道院のような
重厚な石造りの建物とはずいぶん違ったものになります。

私が巡り合った、日本建築の印象的な光と影と言えば、
まず思い浮かぶのは、浄土寺浄土堂です。

兵庫県小野市にある国宝のこのお堂は、
東大寺南大門などを建てた重源の手になるもので、
非常に珍しい「大仏様」と言う様式の建築です。

浄土堂ですので、お堂の中には西方浄土からこの世に姿を現した
阿弥陀三尊像が真ん中に鎮座しているのですが、
お寺の建物としては珍しく、阿弥陀三尊像の後ろには大きな窓が開いているのです。

おりしも時の頃は春の夕刻、西側に開いたその窓から差し込む夕陽は、
浄土堂の中の隅々にあふれ、阿弥陀三尊像をなおいっそう神々しく照らしていたのです。

この空間も圧倒的でした。
日本の建築でこんなにも雄大に光で空間を満たしているものを他には知りません。

そしてもう一つ。園城寺光浄院客殿です。
これは滋賀県大津市にある「三井寺」と言う名でも知られた、
天台宗の大きなお寺の中の塔頭の一つです。光浄院客殿も国宝です。

私が、ここを見せていただいたときには、
たった一人で客殿の中で長時間過ごすことが出来ました。
書院造の代表的存在である光浄院客殿は、開口部が案外少なく、
部屋の中は薄暗く障子を通した光がうっすらと空間に漂っているような印象を受けました。

その障子を開けてみると、薄暗い書院の中に外の光が入り込んできたのですが、
サッと差し込んでくるのではなく、やんわりと優しく光が入ってきたのです。

20130725_d.jpg
障子の外にはかなり広い縁側があり、その縁側を通して部屋の中に光が入ってくるのです。

ル・トロネ修道院とは全然違った光と影なのです。
日本建築の光と影はこういうものなのではないでしょうか。

いずれの光もいずれの影も素晴らしく、
人に感動を与えることが出来るものです。
どちらがいいとかいうような話ではありません。

自分が作り上げる空間にも、こんなような光が出来ればなぁと思いますが、
なかなかむずかしいものです。

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